炭疽菌と炭疽

炭疽(anthrax)は炭疽菌によって起る病気で,動物にもヒトにも感染する人畜共通感染病です. 炭疽菌(Bacillus anthracis)の大きさは1.0〜1.2 × 3〜10μmで,ある条件できわめて抵抗力の 強い芽胞を作り,何年間も感染力を持って生き残ることから生物兵器として使用される可能性が あるといわれてきました.

動物では通常,芽胞の付着した草を食べた家畜が感染し,敗血症(菌が流血中に侵入し,全身に広がる 全身性感染症)となり死亡します.ヒトの炭疽には皮膚の小創傷から感染する皮膚炭疽,芽胞の吸入 により起る肺炭疽,汚染食品を介して起る腸炭疽があります.いずれも敗血症をきたし易く, 毒素も産生され,致命率の高い病気です.

潜伏期間
1〜7日
臨床症状
1) 皮膚炭疽
ニキビ様の初期病変の後,無痛性の非化膿性の悪性膿症が出現します.
2) 肺炭疽
軽度な発熱,疲労感,倦怠感が数日続き,頭痛,筋肉痛,悪寒,発熱等が 起きてきます.重症では突然の呼吸困難,チアノーゼ,昏睡が起ることがあります.口咽頭感染 では咽頭炎,嚥下障害,発熱などが起きます.
3) 腸炭疽
吐き気,嘔吐,腹痛,吐血,血便などが起きます.
4) 炭疽菌性髄膜炎
脳脊髄液の中に菌が現れ,死亡に到ります.
治療
抗生物質(ペニシリン系など),免疫血清療法
予後
皮膚炭疽の約80%は10日程度で治癒.肺炭疽は急激な経過で死亡する危険性が高い. 口咽頭部感染では致死率は50%.髄膜炎ではほぼ100%死亡.


(文責 松本内科医 松本章一)
戻る